■欧州でも有名な「世界で最も美しい橋」

 元王朝の時代に遠くヨーロッパから中国を訪れたのが、イタリア・ジェノヴァの商人マルコ・ポーロでした。モンゴル帝国がユーラシア大陸北部全体を支配していたので、ヨーロッパから東アジアまで旅行することが容易になったのです。

 そのマルコ・ポーロはヨーロッパに戻ってから、アジアへの旅の模様を口述しました。それが、いわゆる『東方見聞録』です。そして、その本の中で永定河にかかる盧溝橋のことを「世界で最も美しい橋」として紹介したのです。そのため、ヨーロッパではこの橋は「マルコ・ポーロ・ブリッジ」と呼ばれています。

 橋のたもとには、清朝の全盛期に時の皇帝、乾隆帝の筆として知られる「盧溝暁月」という石碑も立っており、9月の中秋の名月のときには今でも多くの人が集まるそうです(僕が訪れたのは9月の夕刻でしたから、そういう意味ではビンゴでした)。

 橋のそばには、「中国人民抗日戦争記念館」という博物館もありますが、これが完成したのは1987年ですから、僕が盧溝橋を訪ねた頃には存在しませんでした。

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