■岡山の合言葉は「全員で勝つ!」

 岡山はグループの連携に優れる。右サイドでは木村、本山、藤田が、攻守両面で距離感良くプレーする。さらに言えば、彼らは無理が効く。パスコースが微妙にズレたり、相手に入れ替わられそうになっても、ギリギリのところで粘れる。足を伸ばしてボールに触ったりできる。

 左サイドでは、岩渕、末吉、田部井が連携する。山形戦の前半15分には、3人のパスワークで左サイドを決定的に崩した。さらに左CBの鈴木も、ビルドアップに積極的に顔を出す。右CBの阿部も攻撃の姿勢を見せるが、鈴木のほうが関わりは多い印象だ。

 4-4-2で構える仙台は、ブロックをしきながら岡山の選手をつかまえてくるだろう。ここでポイントとなるのは、ポケットへの侵入だ。仙台の右SBが末吉を見ている状況で左ポケットへ侵入すると、仙台は右CBが出ていかざるを得ない。ゴール前にスペースが生じる。相手のボランチやサイドハーフよりも先に、岡山の選手がそのスペースを使うことができれば、決定的なシーンにつながるだろう。

 岡山のシーズン中の総得点「48」は、リーグ全体で10番目だ。得点力は平均的だったものの、セットプレーからはリーグ1位の得点を記録している。

 山形とのプレーオフ準決勝でも、左CKの流れから2点目をゲットした。田上、阿部、鈴木の3バックはいずれも180センチ以上で、1トップの一美は182センチだ。準決勝のベンチメンバーではCB柳育崇が188センチ、MF柳貴博が185センチ、FWルカオが191センチと、空のバトルを得意とする選手が揃う。仙台の菅田真啓小出悠太の両CBも空中戦は強いが、チーム全体の高さでは岡山に分がある。CKやFKを生かすことができれば、岡山の得点の可能性が高まる。

 ホームで戦う彼らには、ファン・サポーターの強烈な後押しもある。チケットは4日に発売され、即日完売した。

 岡山を率いる木山隆之監督は、12年にジェフユナイテッド千葉、14年に愛媛FC、19年に山形、そして22年に岡山を指揮してプレーオフに挑んだ。自身5度目となるプレーオフで、初のJ1昇格を目ざす。

 クラブにとっては16年、22年に続いて3度目のプレーオフだ。決勝進出は初めてとなる。

 木山監督は「この試合が最後なので、チーム全員でいままでやってきたことと、J1への思いを、ピッチで出し尽くしたい。すべてを出し切る覚悟で全力で頑張りたい」と、落ち着いた口調で話す。

 クラブは選手、スタッフ、ステークホルダー、ファン・サポーターなど「全員で勝つ!」を合言葉に、12月7日のキックオフを迎える。

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(2)へ続く
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