■目的は「明白な間違い」を正すこと
そして、もう一つ、VARが「禁欲的」という理由は、VARが介入するのはピッチ上の主審、副審の判定に「はっきりとした、明白な間違い」があった場合にのみと決められていることだ。
ピッチ上の審判の判定の「はっきりとした、明白な間違い」を正すのがVARの目的であって、微妙な判定すべてに介入してチェックし、100%を求めるためのものではないのだ。
たとえば、ジエゴの反則の場面。御厨主審からはヒジ打ちの場面が見えなかった。
その瞬間、御厨主審は「対角線審判法」に従って、神戸側から見て左サイドに位置を取っており、ペナルティーエリアの右端でジエゴと武藤が競り合ったとき、ジエゴのヒジが武藤の頭部にヒットした場面はジエゴの体に隠れていて見えなかったはずだ。
もし、ピッチ上の審判で見えたとすれば、近くにいた第2副審の中野卓氏ということになるが、クロスが上がってヘディングの競り合いが行われる場面では、副審の意識はオフサイド判定に集中しているから、ヒジ打ちが見えなかったのだろう。
いずれにしても、ピッチ上の審判団が見逃した「重大な事象」に対してVARが介入したのは正しいプロトコールということになる。