■その開始は「NHK杯元日サッカー」

「天皇杯決勝」は、長く「元日・国立競技場」に固定されていた。その最初は、1968年度の第48回大会で、1969年元日に釜本邦茂をエースとするヤンマーディーゼルと杉山隆一など日本代表選手を並べた三菱重工が対戦し、釜本のゴールでヤンマーが初優勝(初のメジャータイトルだった)を獲得した。言うまでもないことだが、ヤンマーは現在のセレッソ大阪であり、三菱は現在の浦和レッズである。

 この1年前、1968年の元日に、NHKが「NHK杯元日サッカー」を企画し、国立競技場で日本リーグ優勝の東洋工業×大学選手権優勝の関西大学という試合を組んだ。その10日後には天皇杯が開幕し、両チームとも出場することになっているのだが、NHKにとっては元日にスポーツの生中継をすることが大きなチャレンジだった。

 当時の日本の社会では、「正月」の意味は現在よりはるかに大きかった。元日に開いている商店など皆無で、3日までほぼすべての商業活動が停止していた。国立競技場のある神宮外苑を舞台とした「元旦競歩(1953年に開始)」を除けば、スポーツもすべて休みになっていたのである。

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