■本来の面白さは「Jリーグ」にアリ

 浦和との試合の後、3連敗について質問されたミヒャエル・スキッベ監督は「Jリーグというのは上位と下位の力が拮抗したリーグだから」と答えていた。外国人監督からよく聞く言葉の一つである。

 僕たちサッカージャーナリストは毎シーズン、開幕前に「順位予想」という難題を突きつけられる。「外したら嫌だな」と思うと同時に、「他の記者と同じではつまらないな」とも思って頭を悩ます。

 しかし、スペインの記者だったら「レアル・マドリードバルセロナ」と答えておけば、誰にも文句をつけられることはない。ドイツだったら「バイエルン・ミュンヘン」、フランスだったら「パリ・サンジェルマン」と答えておけば当たり障りないだろうし、たいてい当たる。

 Jリーグは、やはり現代の世界では類を見ない拮抗したリーグなのだ。韓国のKリーグや中国の超級聯賽でも、Jリーグよりははるかに予想が簡単そうだ。

 ヨーロッパの、各国に絶対王者的なメガクラブが存在するのを見慣れている日本のサッカーファンには、そういったクラブが存在しないJリーグは物足りないと感じるのかもしれない。

 しかし、リーグ戦というのは、本来そういうものなのではないだろうか。

 毎年、同じクラブが優勝していたのではリーグ戦の面白さはない。Jリーグの、心理戦だか消耗戦だか分からないが、追い詰められた者同士の競り合いこそ、リーグ戦本来の楽しみなのかもしれない。

 遠い昔、Jリーグが発足する前の日本サッカーリーグ(JSL)の時代。優勝するのは東洋工業とか、三菱重工とか、ヤンマーディーゼルとかに決まっていた。もっと時代を下って、JSLの最後の10年ほどは日産自動車と読売サッカークラブが毎年のようにタイトルを独占していた。

 そんな時代、ヨーロッパでは今のように各クラブの財政規模が大きくなかったので、勢力は均衡していた。プレミアリーグが発足する前のイングランドのフットボールリーグでも、西ドイツのブンデスリーガでも、毎年、どこが優勝するのか分からない時代が続いていた。それを見て、僕はいつも、「ああ、ヨーロッパのリーグ戦は面白そうでいいなぁ」と憧れていたものである。

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