■原輝綺のファインゴールで清水が3戦連続ウノゼロ
後半開始とともに、秋葉監督が交代カードを切る。左MF矢島慎也と1トップの郡司を下げ、MF西澤健太とFWドウグラス・タンキを送り込む。西澤は2列目右サイドへ入り、MFルーカス・ブラガが2列目右サイドから左サイドへスライドした。
フィジカル自慢のドウグラス・タンキを頂点に置くことで、ボールがおさまるようになる。それに伴って、全体の押し上げが可能となった。さらには前線から激しく規制をかけることで、敵陣でのプレー時間が圧倒的に増えていく。前半とは対照的な展開となった。
61分にはゴールをこじ開ける。右サイドへ流れたMF乾貴士のクロスが相手選手に当たると、こぼれ球を右SB原輝綺が保持する。そのままドリブルでスルスルと持ち込み、左足でゴール左上へ流し込んだ。力みのない鮮やかなコントロールショットだった。
秋葉監督は78分に2枚替えを行ない、アディショナルタイムには5枚目のカードとしてDF高木践を投入する。その直後に際どいシュートを浴びる場面もあったが、1対0で逃げ切った。ウノゼロのクリーンシートは3試合連続だ。
試合後には最終戦のセレモニーがあり、退団が発表された権田がマイクの前に立った。
「1年前にクラブから、24年以降は契約を更新する意思がないと伝えられ、あと1年、どうしたらJ1へ上がったあとも落ちないチーム、もっと子どもたち、静岡の人、全国の人に愛されるエスパルスになるのかを考えて、この1年は過ごしてきました」
シーズン中の権田は、J1昇格後を見据えたコメントを何度も発信してきた。「上がるだけではなく、定着するために」という前提で、チームの戦いぶりを評価していた。その思いの裏側には、こんな事実があったのである。
1989年3月生まれの元日本代表GKは、来シーズン開幕直後の3月に36歳となる。クラブには東京五輪世代のGK沖悠哉ら、4人のGKが在籍している。世代交代ということになるのだろうが、権田はGKとしていままさに円熟期で、今シーズンのプレーは衰えを感じさせるものではなかった。
クラブの判断は、果たして吉と出るのか。まずは来シーズンへ向けたチーム編成が問われる。