■32年の歴史の中で「最も奇妙な決勝戦」
決勝戦会場は、32大会33試合のうち国立競技場が23回。その国立建て替え時期の2014年から2019年、そしてオリンピック直後の2021年に計7回会場となったのが、埼玉スタジアムである。他には、1994年に神戸ユニバースタジアムが会場になっており、1996年はクラブのホーム、磐田と鹿島が会場になった。
決勝戦の多くは、11月3日の「文化の日」を中心にした休日あるいは土曜日に開催されている。1990年代には3回この時期が外されたが、他では「10月下旬~11月上旬」の原則で開催できなかったのは、2020年大会だけだった。
この年の大会は新型コロナウイルスによる4か月間ものシーズン中断を受けて完全ノックアウト方式で行われ、決勝戦は2021年1月4日、新しくできた国立競技場で開催された。観客数は「キャパシティの半分」に制限され、2万4219人。長谷川健太率いるFC東京とネルシーニョ率いる柏レイソルの対戦だったが、1-1で迎えた後半29分にアダイウトンのヘディングシュートでFC東京が決勝点を挙げた。だが、観客は全員マスク着用を義務づけられ、声を出しての応援も禁止されていた。32大会の歴史のなかで最も奇妙な決勝戦だったかもしれない。