■勢いづけた「メディア王」「石油王」
イングランド・プレミアリーグ、UEFAチャンピオンズリーグなどの成功(放映権収入の高騰、世界化、世界的なマーケティングの成功)によって、サッカーは世界の投資家が注目する分野となった。
イングランドきっての名門であり、世界的にも絶大な人気をもっていたマンチェスター・ユナイテッドが1991年に株式を上場すると、1998年にはオーストラリア生まれのアメリカの実業家ルパート・マードックが持つ英国の放送会社「BスカイB」が買収、サッカーへの投資の先鞭をつけた。2003年にはロシアの石油王ロマン・アブラモビッチがチェルシーを買収、積極的な投資でひなびたロンドンの名門だったクラブをアッという間にプレミアリーグの王者に仕立て上げ、その後のサッカーへの投資を勢いづけた。
そうした投資が国境を越え、「マルチオーナーシップ」へと発展するのに、10年を要しなかったことになる。中国や東南アジアの経済成長に伴う放映権事業の世界的な拡大とともに、巨大な投資が集まることで、21世紀の最初の20年間で、サッカーは20世紀までとはまったく違った様相を呈するようになったのである。