サッカーは世界中で愛されているスポーツである。日本から世界へと羽ばたく選手がいる一方で、近年は世界が日本のクラブに興味を示すことも。近年、世界的な大資本が複数のクラブを保有する「マルチオーナーシップ」が流行しているが、その波が日本に到達したという。この9月には、世界的な飲料メーカーが大宮アルディージャを買収したが、今後も起こりうると警鐘を鳴らすのは、サッカージャーナリスト大住良之だ。そうした「マルチオーナーシップ」は、日本のサッカー界へ、どのような影響を与えるのか? 「問題点」と「可能性」を考察する。
■先駆けは「マンチェスター・シティ」
さて、このように国際的に複数のクラブを保有し、運営している形態を「マルチオーナーシップ」という。先駆けとなったのはレッドブルだが、もちろん、それだけではない。有名なのが「シティ・フットボール・グループ」だ。イングランドのマンチェスター・シティFCを中心に、UAE(アラブ首長国連邦)のアブダビのファンドグループ(ADUG)が資金を出し、マンチェスターに本社を置いて運営されている。
ADUGは2008年にマンチェスター・シティFCを買収すると、2013年にはアメリカMLS参加予定の新クラブ「ニューヨーク・シティFC」を設立し、ここで「シティ・フットボール・グループ」が誕生した。
そして翌2014年1月にはオーストラリアAリーグの「メルボルン・ハートFC」を買収して「メルボルン・シティFC」と改称、同じ2014年の7月にはJリーグ「横浜F・マリノス」の少数株主となり、以後、横浜FMのチーム運営に関与することになる。オーストラリア代表監督を辞任したアンジェ・ポステコグルーが2018年に横浜FMの監督に就任し、このクラブのサッカーを一変させるのは、シティ・グループの影響である。