■「このチームにとって必要だったんじゃないか」

 もっとも、予期せぬ展開は清水を慌てさせなかった。むしろチーム内の団結力とピッチ上の士気を高めた。リオデジャネイロ五輪に出場したU-23日本代表で、コーチを務めていた秋葉監督の薫陶を色濃く受けたMF矢島慎也が言う。
オリンピックのときに『チームにとって必要なことしか、目の前では起こらない』と口を酸っぱくして言われていた。航也の行為に対して僕があれこれと言及することはないけど、あの場面で10人になった、というのは多分、このチームにとって必要だったんじゃないかとか、いまは受け取っています」
 北川との交代でベンチに下がった乾も、苦言のなかにエールも込めた。
「やはり10人になるべきではないし、そこは航也も反省していると思うし、次はないように反省してもらえればいい。ただ、今シーズンのチームを引っ張ってきたのはあいつだし、MVPでもおかしくないだけに、最後をこんな形で終わるのは悔しいと思う。何試合の出場停止になるのかはわからないけど、1試合で済むとは思えないので。この終わり方は可哀想だけど、自業自得なところもある。これが来シーズンのあいつ成長につながっていけばいいんじゃないかな、と」
 昇格が決まった直後。責任を感じていた北川は、人目をはばからずに号泣した。北川が巻いていたキャプテンマークを、試合後に再び手わたした原が言う。
「昇格が決まった瞬間に、彼にはピッチ立っていてほしかった。僕たちがどうこう言うまでもなく反省していると思いますけど、僕たちにとっては、キャプテンは彼しかいなかった。昇格したシーズンのキャプテンが彼でよかった」

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