■セットプレーで先制した清水が逃げ切り…

 両チームともに先制点が欲しいなかで、清水が後半開始早々に試合を動かす。50分、MF宇野禅斗の右CKをニアサイドのMF中村亮太朗が触り、後方へ流れたボールをCB住吉ジェラニレショーンが右足でプッシュした。高橋不在の3バックを束ねる背番号66が、自身シーズン4得点目となる貴重なゴールを決めたのだった。

 直後、栃木が3枚替えをする。この試合に負けるとJ3降格が決まってしまう栃木が、失点に反応してすぐに動いてきたのだった。栃木は60分に4人目、65分には早くも5人目の交代カードを切る。相手は必死だ。

 清水も65分と70分に2枚替えをして、守備の強度を上げていく。失点のリスクを減らしながら試合を進めていく、との意図が読み取れた。

 しかし83分、北川が相手選手と接触後、報復行為をしてしまう。70分からピッチに立った主将が一発退場となり、清水は数的不利に立たされた。

 ここからは、水戸の攻撃を跳ね返すことに徹底した。8分のアディショナルタイムを経て、主審の長い笛が鳴り響く。

 栃木のJ3降格と、清水のJ1復帰を告げるホイッスルだった。

 試合後のフラッシュインタビューに応じた秋葉監督は、「最低限の目標にしているところには到達できた」と話した。ただ、胸を撫でおろすことはない。「まだあとふたつ。我々はチャンピオンになって昇格するんだという話をしていますので、タイトルにこだわって、昇格したいと思います」と、残り2試合でJ2優勝をつかむと力強く宣言した。

 シーズンを通した戦いぶりで言えば、清水のJ1昇格は妥当である。ただ、秋葉忠宏監督と選手たちの今シーズンは、昨年12月の東京ヴェルディとのJ1昇格プレーオフから始まっている。

 拮抗した試合をモノにする勝負強さやしぶとさが身についたのか、J1で通用するチームになったのかと言えば、他でもない彼ら自身が納得できていないだろう。ここ数試合の戦いは、いつもの彼らではない。

 だからこそ、残り2試合は無駄にできない。2強を形成してきた横浜FCが連敗を喫し、清水は首位に立った。自力で優勝を狙える立場になる。指揮官が話すように、「あとふたつ」にこだわるのだ。

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