【退任する鬼木達監督と戦うACLE。J1川崎の上海戦に挑む姿とは(1)】“夢半ば”の指揮官は「最後の役割を“結果”で残して、来年、他の人たちにつなげて渡したい」……現地では肉体とメンタルの疲労回復の画像
ACLE上海申花戦を前に上海市内での会見に挑んだ川崎フロンターレの鬼木達監督 撮影:中地拓也

 鬼木達監督と小林悠が出席した記者会見は、早くもアジアの雰囲気に包まれていた。黒っぽさも混じる曇り空が包み込む上海大運動場。工事が進むスタジアム外壁をたどり、無造作に開けられたドアを抜けた先にあるカーペット貼りの部屋がその舞台だった。

 ACLEでは、昨年までのACL同様に試合前日に記者会見が設けられる。この日、日本人記者は筆者とフリーライターの江藤氏だけ。等々力競技場が会場であるなら新聞社や通信社も含めて10人以上のメディアが足を運ぶが、アウェイゲームとなればそれも異なる。試合によっては地元メディアも加わらないことがあるので、全メディアが2人しかいないときもあった。
 川崎フロンターレと上海申花がぶつかるACLE第3戦を翌日に控えた10月22日の会見には、10人ほどの現地メディアほどが訪れた。用意された椅子は全部で72席。関係者やオウンドメディアも含めて会見開始時刻の現地時間11時になると半分近くが埋まった。
 この会見で聞きたいことがあった。ACLEはJリーグのシーズンをまたいで行われる大会だ。すでに今季限りでの退任が公表されている鬼木達監督にとっては、夢半ばで降りることが決まっているコンペティションである。
「悲願のタイトルだから、何がなんでも取りたい」
 幾度となくそう話してきた指揮官が、どのような思いでこの大会に挑むのか。次につなげたい気持ちは当然、あるだろう。悔しさもあるだろう。ただ、それはすべて想像の域を超えない。どのような言葉で気持ちを表現するのか――。マイルを上海行きの航空券に変えた意味は、そのためにあった。

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