■メンタルと肉体での疲労回復

 筆者がマイクを持ったのは、3人目。先述した質問を前に、まず聞いたのは「迫力のある前線と高さのある最終ラインを持つ上海とどう戦うのか」。
 指揮官は最初の質問に、「コンパクトに戦わないと、相手の走力がいかされる。高さの話も出ましたけど、下で戦えるのであれば、そういう選択肢になる。攻撃的に戦い続ける中で、ボールを動かし続けることも重要」と説明する。であれば、鬼木監督がここまで8年にわたって培ってきた川崎らしさが上海のピッチで見られるか。
 小林悠も、ギラギラした目で「高さはやっぱり難しくなると思うので、相手のサッカーをさせないように、自分たちのサッカーで崩していければ」と指揮官とイメージを重ねる。直近の試合で、鬼木監督に捧げたゴールを決めた小林と、鬼木監督の視線は同じ方向を向いていた。
 続けて、「羽田空港に多く集まったサポーターに見送られて渡った中国で、どのように調整しているか」。本当は、サポーターの部分と現地調整の部分を分けて聞きたかったが、早くも会見を打ち切ろうとしている司会者に「もう2つだけ質問をさせてほしい」と早口でお願いをしたため、急遽、2つの質問を1つに合体させた。
 本当は鬼木達監督と小林の2人に聞いたが、答えることを許されたのは指揮官だけ。
「あれだけ多くのサポーターの方が駆け付けてくれたので、シンプルに勝って帰りたい」
 まずはこう一息に話すと、「ただ」と口調を緩めた鬼木監督は、「ルヴァンカップの敗戦だとか、ガンバのゲームや移動などの疲労もありましたので、ここ数日はメンタルと体の疲労回復を優先しています。今日ラスト1日ありますので、自分たちがいい仕事をしっかりして、明日に向けていい準備をしたい」と言葉を続ける。
 肉体的な疲労も、メンタル面での疲労も想像に余りある。最後のタイトル獲得の可能性を予想外の結果で失ったこと、8年指揮を執った指揮官の退任――。ある意味で、喧騒のない国外は、川崎の選手にとって落ち着ける環境なのかもしれない。

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