■「普通に競ったら勝てない」
鬼木氏が監督に就任した2017シーズン。30歳になる直前だった小林は、新体制のチームのキャプテンを前任者の中村憲剛さんから引き継いだ。
「オニさんとケンゴさんがそういう話をしていて、その後に『ユウにやってほしい』と言われて。自分もそのつもりだったので、ぜひ、という流れでした」
2017シーズンの川崎は最終節での大逆転劇でリーグ戦を制し、悲願だった初タイトルを獲得。小林も得点王とリーグMVPの個人タイトルを手にした。
「チームに初優勝をもたらせてくれたのもオニさんですし、僕が個人タイトルを取れたのもオニさんが僕を信頼して、使い続けてくれたからなので」
コーチ及び監督として、小林のリーグ戦387試合、J1歴代7位の通算140ゴールをすべて共有してきた。そして、388試合目は1点を追う68分に訪れた。
家長昭博、遠野大弥、山内日向汰、小林とアタッカー4人を同時投入する執念の采配が実ったのは81分。家長のパスを受けた遠野が左サイドを突破。ファーへ送った山なりのクロスを、対空時間の長いジャンプから小林が頭で押し込んだ。
「アキさん(家長)と(遠野)ダイヤが崩してくれたので、自分が点を取れる場所に入ることと、普通に競ったら勝てないと思ったので先に飛ぶことを意識しました。あの深い位置だったら、フワッとしたボールが来るという経験があったというか、ダイヤも予想通りのボールをくれて、しっかり決められてよかった」