■清水にとってのJ1昇格はプロセスに過ぎない

 そう言って権田は、過去の昇格チームを持ち出した。

「22年にJ2で優勝した新潟は、J2でしっかりスタイルを作って、そのスタイルをJ1でもやり通して、いま定着しつつある。僕らもそこを目ざさなきゃいけないし、その新潟ですら優勝争いはなかなかできないのがJ1だと思うので。今シーズンのJ2はあと5試合しかないですけど、もう一段、二段と上げていかないと、J1へ行ってもまた苦しむことになってしまうと思うので」

 取材対応をしていた権田が、「町田は今日、どうなったんですか?」と記者に聞く。サンフレッチェ広島に負けて2位から3位に後退したと知ると、小さく頷いてから口を開いた。

「でも、まだその順位にいるわけじゃないですか。僕らが本当に来年そういう戦いを見せるというところまでを考えたら、うん、もっともっとやらなきゃいけないのかなって感じます」

 チームは平均年齢が上がっている。乾は36歳で、同学年で早生まれの権田は35歳だ。CBで29試合に出場している高橋祐治は31歳、DFラインの貴重なバックアッパーとなっている吉田豊は34歳、北爪健吾は32歳である。秋葉監督が複数のタスクを託すMF矢島慎也は30歳で、FW北川航也は28歳だ。

 高卒ルーキーのFW郡司璃来がプレータイムを伸ばし、17歳のドリブラー西原源樹はU-19日本代表に選出されている。若い才能の萌芽は見られるものの、J1昇格だけでなくJ1定着からJ1優勝争いまで視野を広げると、戦力の底上げは喫緊の課題と言っていい。4月に就任した反町康治ゼネラルマネジャー兼サッカー事業本部長は、育成年代の現場にも足を運んでチーム全体の体制整備を進めている。

 日本サッカー界における立ち位置を見れば、清水はJ1に定着しなければいけないクラブである。J1残留争いではなく、J1優勝争いに加わっていくべきクラブである。J1復帰直後のシーズンの目標がJ1残留では、それが現実的だとしても物足りない。

 だとすれば、10月6日の水戸ホーリーホック戦から、「J1基準のこだわり」をはっきりと見せていくべきだろう。昨シーズンの最終節でJ1自動昇格を逃した場所で、昨シーズンとの明確な違いを、見せていかなければならない。

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