脳裏にパッとひらめいた思いを言葉に変換しようとして、急に照れくさくなったのか。川崎フロンターレのFW山田新の声のトーンが急に小さくなった。
「……まあ、自分的には持っているな……と思います」
何に対して「持っている」と感じたのか。答えはホームのUvanceとどろきスタジアムにサガン鳥栖を迎えた13日のJ1リーグ第30節。2-2のまま後半アディショナルタイムに突入した100分に、山田が決めた劇的な決勝ゴールにある。
鳥栖のロングフィードをDFセサル・アイダルがはね返し、こぼれ球をボランチ橘田健人が左サイドバック三浦颯太へ展開。利き足の左足から放たれた縦パスに、前方にいたFWマルシーニョを抜け出してカウンターが発動された。
鳥栖陣内の左サイドを一気に抜け出したマルシーニョが、ペナルティーエリアの左側から右足アウトサイドでラストパスを送る。ニアサイドへは山田が、フリーの状態で詰めてくる。土壇場で熱戦に決着がつくと、誰もが信じて疑わなかった。