■2勝9分け195敗の「平和の国」

 「サンマリノ共和国」が周囲をイタリアに囲まれた小国であることを知っている人は少なくないと思う。欧州連合(EU)に加盟しているわけではないが、イタリアとの間に国境があるわけでもなく、人々はイタリア語を話し、イタリアの町に仕事に出かけ、貨幣も、特別にユーロを使うことが認められている。建国は紀元301年9月3日とされており、「世界最古の共和国」であり、1700年を超す歴史を通じて一度も戦争をしたことがない「平和の国」でもある。

 面積は約61平方キロ。東京の世田谷区よりわずかに広いものの、ほとんどが山地と丘陵地の国土には約3万4000人の人が暮らしている。ちなみに、2024年現在の世田谷区の人口は約92万人である。国際サッカー連盟(FIFA)加盟国でも最小の国のひとつだが、国際舞台への登場は、1990年と、わずか34年前のこととなる。サッカー協会自体は1931年に創立されていたのだが、欧州サッカー連盟(UEFA)とFIFAに加盟したのは1988年。半世紀以上もかかったからだ。

 以後、サンマリノ代表チームは今回のリヒテンシュタイン戦まで206試合をこなし、その成績は、なんと2勝9分け195敗。総得点34、総失点824。現在FIFA加盟国は211にのぼるが、アフリカのエリトリアが過去2年間国際試合をしていないために「ランキング外」となっており、「210位」が最下位。それが、サンマリノなのである。

 相手のリヒテンシュタインも人口4万人の小さな国だが、FIFAランキングは199位。「格上」である。だが20年前、サンマリノ・サッカー史上最初の勝利の相手も、やはりリヒテンシュタインだった。このときは親善試合で、当時は「オリンピコ」と呼ばれていたサンマリノ・スタジアムでの試合。スコアはやはり1-0だった。

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