■乾貴士が感じた現状への思い

 だからといって、自らが置かれた現状を肯定するわけにもいかない。北川と「やっぱり俺らが取らないとあかんな」と、思いを共有した理由を乾はこう語る。

「フォワードの2人が点を取れない、という状況はやはりよくない。今日の試合が引き分けた責任は俺らにある、というところを航也とはしっかりと話し合いました。もう一度、点が取れる2人になる。その責任をしっかりと果たしていきたい」

 昨シーズンは2位のジュビロ磐田に勝ち点わずか1ポイント差の4位で自動昇格を逃し、J1昇格プレーオフの決勝に進むも、試合終了間際にPKを決められて東京ヴェルディと引き分け、規定により昇格する最後の1枠ももっていかれた。

 ほんのわずかな隙でも見せてはいけない。大事な終盤戦に差しかかっているからこそ、乾は今シーズンで14勝2分けと圧倒的な強さを誇ってきたホームで、初めて相手に先制を許した試合展開に苦言を呈さずにはいられなかった。

「勝ち切りたかったのが一番ですけど、それでも最低限というか、追いついて勝ち点1を取れたのはよかった。ただ、先制点を取られたのは、どうしても苦しい試合展開になってしまう点であってはいけない。自分たちが先制する試合展開を含めて、そこはもう一度、チームのみんなで徹底していきたい」

 清水が追いついたのは50分。MFルーカス・ブラガの値千金の同点ゴールをアシストしたのは乾であり、歓喜の場面は自陣からピッチの中央を高速ドリブルで駆けあがって発動させた、乾坤一擲のカウンターから生まれていた。

(取材・文/藤江直人)

(2)へ続く
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