パリ五輪サッカーのグループステージ初戦で、ワールドカップ王者であるスペインに、1-2の点差以上の完敗を喫した、なでしこジャパン。前回のW杯予選では、4-0で快勝した日本だったが、見事にリベンジを果たされてしまった。その理由とは? 試合の経過を見ながら、サッカージャーナリストの大住良之が「勝負の分かれ目」を分析。同時に、次のブラジル戦で、勝ち点3を得るためのプランを考察する。
個人としても組織としても良くなった「守備」
完敗だった。スコアは1-2。だが、内容は一方的だった。
昨年のワールドカップのグループステージでも対戦し、そのときにはなでしこジャパンが4-0で快勝。宮澤ひなたを軸とするカウンターアタックが面白いように決まった。
だが、スペインはその敗戦から大きく成長していた。ボールを奪われてからの守備が、個人としても組織としても格段に良くなっていた。その結果、なでしこジャパンは、カウンターだけでなく、攻撃の形をほとんどつくることができなかった。
立ち上がりは悪くなかった。「4-2-3-1」の布陣から、相手ボールを積極的に奪いに行った。そうした狙いがこの試合で唯一シュートまで結びついたのは、キックオフから時計が2分を回るか回らないかというところだった。
日本のプレスにやや不安定になったスペイン。センターバックのライア・アレイシャンドリが左に展開しようとしたボールを宮澤がカット。時間をかけずに中央の田中美南に送ると、田中はワンタッチでDFラインの裏に絶妙なパスを送り、走り込んだ藤野あおばがボールを受けてシュート。相手GKの好セーブで得点にはならなかったものの、宮澤がボールを奪った瞬間から、田中、藤野との呼吸がピタリと合い、見事な攻撃だった。