■英語で要求したパス
家泉はゴミスのマークを捨てて、遠野のマークにつく。次の瞬間、声が響いた。
「Come on!」
英語でパスを要求したのはゴミス。その後のやり取りを遠野が明かす。
「見えていなかったけど、彼が呼ぶ声が聞こえたので。彼はゴール前のクオリティーが高いので、当てればゴールへ運んでくれると信じて思い切って蹴りました」
声が響いてきた方向へ、遠野はほぼノールックで左足を振り抜いた。パスの先には家泉のマークを外れたゴミスが走り込んできていた。右足をコンパクトに、かつ薄くヒットさせる。コースを変えたボールがゴール右隅に吸い込まれた。
ハーフタイムにDF岡村大八との交代を告げられた家泉が言う。
「2失点目は直接やられているわけではないけど、警戒していたはずのポストプレーからのワンツーみたいな形でゴールされた。試合前に(ゴミスに対して)やろうとしていたプレーが、まったくできなかった。(ゴミスの身体が)強いからフリックされたのではなく、経験といった部分で自分は全然足りなかった」
前半アディショナルタイムの48分には、FWマルシーニョが獲得したPKを確実に決めた。結果を残せずに悩んできたゴミスが、初ゴールからわずか18分間で今シーズンのJ1でFWジャーメイン良(ジュビロ磐田)に次ぐ2人目、川崎では2022年8月のマルシーニョ以来、延べ15人目となるハットトリックを達成した。