■繰り返した6度の「ノー」
試合後の取材エリア。ハーフタイムにベンチへ引き揚げる際に、目元をぬぐっているように見えた、と問われたゴミスは「ノー」を6度も繰り返した。
「サッカーはハッピーなものだから、そのくらいでは泣かないよ」
照れ隠しだった。フラッシュインタビューでも涙腺をやや潤ませたゴミスへ、昨シーズンから練習で良好なコンビネーションを築いてきた遠野が目を細める。
「人格者というか、彼が試合のメンバーに入らなくても、一人ひとりに『頑張れ』と言ってハイタッチしてくれる。多分苦しかったはずだけど、そういう姿を見せない。僕たちもそれを知っているので、今日は本当に素晴らしい日になりました」
屈強な身体と卓越したテクニック、濃密すぎるほどの経験に崇高で誰からも慕われる人柄。ゴミスの復活祭の舞台裏で、すべてが至高のハーモニーを奏でていた。
(取材・文/藤江直人)