■ウルブスは湘南の若手選手を継続的に追跡

 今回のパートナーシップ締結の発表に合わせて、ウルブスのアカデミー責任者が来日した。J1リーグのヴィッセル神戸戦(4月20日)を視察した彼は、興味深い選手として数人の名前をあげたという。

「その3人は自分たちの補強リストに入れて、ずっとウォッチングしていくと。そういう関係が大事だと思うんです。

 ヨーロッパのクラブと提携をして、選手を安く買われるだけではもったいない。提携によって移籍のルートを自分たちで確保できれば、クラブにも選手にもメリットが生まれます。

 たとえば、選手がどうしても海外へ行きたいとなると、代理人さん側から『TCを取らないでくれませんか』と、お願いされることがあります。あるいは、5大リーグ以外の2部のクラブあたりだと、『TCが発生しないなら獲る』と言ってきたりする。我々のようなクラブからすると、TCを諦めることはできない。大切な選手を送り出して1円も入ってこないというのは、クラブ経営として健全ではないでしょう」

 眞壁会長が言う「TC」とは、移籍補償金(training compensation)を指す。FIFA(国際サッカー連盟)が定めた国際的なルールで、選手が初めてプロ契約を結んだタイミングと、23歳の誕生日を迎えるシーズンまでの国際移籍で発生する。

 ウルブスとの提携発表前の3月下旬に、湘南U-18所属のDF小杉啓太の海外移籍が発表された。昨年11月のU―17W杯で日本代表のキャプテンを務めた彼は、シュツットガルトの練習に参加した。ウルブスもU-21のカテゴリーでの獲得に興味を示し、ZOOMでの意見交換も行なわれた。いくつかの選択肢のなかから、小杉はスウェーデン1部のユールゴーデンIFに加入したのだった。

「ユールゴーデンからはTCをきちんと支払ってもらいます。そういうクラブとのパイプを、増やしていきたいんです。遠藤航は世界へ出ていくために、その前段階として浦和レッズへ行った。これまで同様に代理人さんと協働しながら、ウチからも直接行けるようにしたい。今回のパートナーシップ締結によって、そういう道を作っていきたいのです」

【#2パートナーシップ締結から波及するクラブ戦略へ】
(2)へ続く
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