■マリ戦をきっかけとして

 今年3月、高井はクラブハウスの入り口で取材に応じた際に「不安定なところがある」と自身の課題について語っていた。試合によってパフォーマンスに波があることを自覚しており、それをなくすことが必要である、と。

 そんな中で、パリ五輪の最終予選を前に召集されたラストチャンス。高井は、京都府亀岡市のスタジアムで評価を高めた。チームとしてはU―23マリ代表に敗れたものの、個人としては充分以上に渡り合った。

 その試合を境に、チームに戻っても好パフォーマンスを見せた。鬼木達監督も多摩川クラシコをはじめとして、神奈川ダービー、そして町田ゼルビア戦と3試合連続で先発メンバーとして送り出したが、周囲の期待に応えるように、そして、波をなくすという自身の課題を振り払うかのようなプレーを見せている。

 パリ五輪最終予選のメンバーに選ばれた直後、3月の代表活動期間で何か掴んだものがあったのか聞いてみたが、「うーん……」と考えたうえで、「それをきっかけにではないですけど、良いプレーができている」と答えるにとどまっていた。ドーハでその質問を改めてしてみたが、「特に思うところはないですけれども、積み重ねかなと思います」と話すのみだ。こう答えるのは、今の成長ではまだ満足できないという気持ちが高井の中にあるからかもしれない。

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