■変わったものと変わっていなかったもの

 登里との対戦がピックアップされた試合ではあるが、ピッチ上の11人+ベンチの7人でサッカーをやる以上、けっして彼一人にやられたわけではない。C大阪のチーム力に屈したがゆえの敗戦である。

 それでも、登里が敵として見せたボール保持のためのプレーは川崎に与える影響が大きかったのではないか。もちろん、大きく選手が入れ替わった中で、改めて「ゼロからチームを作り直す」という姿勢を見せた鬼木達監督のもと、フロンターレは全体で目標に視線を向けている。一つ一つ積み上げる段階ではあるが、フロンターレについて誰よりも知る一人が目の前で見せたものがあるからこそ、感じる部分も多いはずだ。

「我慢する時間は大事でした。もっともっと落ちながらコントロールしようかなと思ったんですけど、間延びしたらもったいないと考えながら、セカンドボールとカウンターのケアをすることを意識しました」

 登里は試合中に考えたことをこう説明する。チーム全体の中で自分がどう振る舞うべきか、サッカーIQの高いこの選手は冷静に分析しながらフォア・ザ・チームに徹していた。新たなプレースタイルに挑戦する中で、その姿勢は青黒のユニフォームを着てプレーしていた昨季と何も変わっていなかった。

(取材・文/中地拓也)

(後編へ続く)

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