【登里享平との初対戦が逆に古巣・J1川崎に与えたものとは。復活を期す中で(1)】登里の変わったものと変わっていなかったもの……試合中に考えていたチームのための行動の画像
川崎フロンターレと初対峙したセレッソ大阪の登里享平 撮影:中地拓也

「ワクワクしていた」とは、本当に思っていることでもあり、一方で、その緊張感を隠すためでもあったのかもしれない。

 今季からセレッソ大阪の一員としてプレーする登里享平にとっての、川崎フロンターレを離れての初めての古巣戦。ヨドコウ桜スタジアムでの試合は、これが今季4試合目でしかない。勝手知ったる、とは言い難いホームスタジアムで、15年間所属したチームと対戦するのだ。

 しかも、バスでスタジアムに入る際には青黒のユニフォームを着たサポーターの姿が目に入ったという。その中には、当然、登里自身が知っている人もいる。麻生グラウンドで話した人、等々力で応援してくれた人、商店街巡りで触れ合った人――。「ちょっと、感慨深かった」とだけ感想を話したのは、それ以上話せば目からあらぬものが落ちてくる可能性があったからではないか。

 そんな登里の気持ちを切り替えさせたのは、ウォーミングアップの時に聞こえたコミカルなリズムだった。

「さあ行こうぜ登里~ ララララララララララララ さあ行こうぜ登里~ 勝利を呼び込めノ・ボ・リ」

 P丸様。のメロディを原曲としたこのチャントが、今の彼の背中を押す。聞きなれたであろう50TAを忘れるわけはないが、桜色に染まったスタジアムの大音量は、向かうべき方向を明確にしてくれた。
「セレッソのサポーターが自分のために応援歌を歌ってくれたので、しっかりと挑むことができました」
 その言葉は力強かった。

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