■後半4分「勝負をつける」シュートが決まる
だが、ピッチ上の選手たちは最後まで戦い続けた。通常、延長戦前はベンチ前で過ごさなければならないが、オーストリア人のフランツ・ベーラー主審は、そんなに頭の固い人ではなかった。90分間が終わると両チームにロッカールームに戻ることを許し、両チームは新しいユニホームに着替えて元気よく延長戦のピッチに散った。
そして、その後半4分、勝負をつけるシュートが決まる。自陣の左でボールを持ったポルトのMFアントニオ・ソウザがこの試合では希有と言っていい軽やかなステップワークを見せ、泥沼の中、ペニャロールの2選手を抜き、左足でペニャロールDFラインの背後にパスを送る。最初に追いついたのは、ペニャロールのDFマルセロ・ロッティだった。だが処理しようとした瞬間にボールがぬかるみに止まった。そこにポルトのマジェールが迫り、ボールをつついて前に出し、ロッティと入れ替わって前に進んで右足で浮き球でシュートを放った。
ボールは前進していたペニャロールGKエドゥアルド・ペレイラの頭上を越え、ゴール前に落ちる。そこが泥沼なら、ボールは止まっただろう。しかし奇跡的に、そこはまだ泥沼化していない白雪の上だった。その雪の上をボールがコロコロと転がり、ゴール内に入った。いったんはボールが止まるのではないかとボールを追おうとしたペレイラだったが、雪の上で転がるのを見てあきらめた。