■大事なのは身長よりも「見極める」能力

 ロングボールへの対応には、何よりも落下地点を見極め、相手選手より早くそのポジションを占めることが重要だ。しっかりとポジションを占めていれば、相手がどんなに長身で、ジャンプ力があっても、負けることはない。日本代表の遠藤航は身長178センチ。現代のサッカー、とくにプレミアリーグでは「長身」とは言えない。それでもヘディングの競り合いで勝てるのは、相手より早く落下点にポジションを取ることができるからだ。

 だが、多くのコーチ、多くの選手は、ヘディングの競り合いの能力は、身長やジャンプ力で決まると考えている。もちろん、落下地点の見極め能力に差がなければ、長身の選手、ジャンプ力のある選手が有利になるのだが、誤った指導により、小柄な選手たちは最初からヘディングの競り合いで勝つことなどあきらめている傾向がある。

 プロ野球の外野手は、バッターが打った瞬間に落下地点に向かって全力疾走し、ボールが落ちかけるタイミングを見計らって初めてボールを確認し、キャッチの態勢に入る。それは生まれ持った能力ではなく、間違いなく訓練によって培われた能力である。

 ロングボールに対するヘディングの能力を開発していくには、サッカー選手にも同様の訓練が必要なのではないだろうか。たとえば、コーチがテニスボールをラケットで高く打ち上げ、キャッチするような訓練を、小学生時代に定期的にしていったら、野球の外野手のような能力が伸びるのではないか。

 ヘディングのさまざまな要素について、日本のサッカーはもう少し真剣に考え、取り組みをする必要があるように思う。

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