リバプールFWの「10年に一度」のプレー

 ゴール前で頭を横に振り、ヘディングシュートを失敗する選手を見ると、私の頭に浮かぶのは、ゴールに「いやいや」をしているというイメージだ。「いやいや」をしたら、ゴールには嫌われる。礼儀正しく「おじぎ」をすれば、ゴールは受け入れてくれるはずだ。

 長いボール、高いボールの処理に関しては、背の高さやジャンプ力ではなく、「落下点の見極め」が8割から9割を占めると、私は考えている。

 長いキックでも、ボールは最後は真下に向かって落ちてくる。その落下点にポジションを占めることができれば、ジャンプしなくても「競り勝つ」ことができる。ポジションを占められなかった選手は、無理やり体をこじ入れたり、のしかかるような形、すなわちファウルをするしかなくなるのである。

 最近見たプレーで最も驚嘆したのは、2月17日に行われたイングランドのプレミアリーグ、ブレントフォード対リバプール戦の1シーンだ。前半35分、自陣ハーフライン手前でのブレントフォードのFKをGKが蹴り、リバプールのペナルティーエリアに送る。こぼれたボールを、エリア内からリバプールDFフィルジル・ファンダイクが相手陣に向かって大きくクリアする。

 自陣のセンターサークル手前からこのボールを追ったのが、リバプールのFWディオゴ・ジョタだった。左斜め前に全力疾走しながらハーフラインあたりから上空を見上げてボールの落下点を見定め、落ちてくるまでボールをしっかりと見定めて、走りながら上空を見上げた姿勢のままでヘディングで右にボールを流したのだ。

 そこには自陣ペナルティーエリア前から全力で駆け上がってきたFWダルウィン・ヌニェス。ドリブルで進むと、GKが前進したのを見て美しいループシュートで先制点を奪った。ヌニェスのシュートも見事だったが、頭上を越えてきたボールを正確に頭でつないだジョタのプレーは、10年に一度見ることができるかどうかの見事なものだった。

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