■左ウイングバックに誰を置くのか
では、3バックにすることはなぜできなかったのか。この記事の前編で大きな“テーマ”があったことは書いたが、スカッド的にも難しい一面があった。
3バックにすること自体は、交代をせずとも伊藤洋輝、冨安健洋、板倉滉という3人でも成り立つ。あるいは、板倉を下げて町田浩樹を入れることもできた。谷口彰悟ではなく町田であるのは、この試合で谷口はウォーミングアップすることがなく、町田がその役にあったからだ。
ただし、ウイングバックに誰を置くかという問題はあった。カタールW杯では右で伊東純也、左で長友佑都がそれを担った。また、三笘薫も左でそのポジションに当たった。今大会も伊東は招集されていたものの、このイラン戦を前に離脱。
一方の三笘は昨年末の負傷があったことで、復帰したのが1月31日のバーレーン戦である。イラン戦前日に「先発でも行ける」と三笘自身は語っていたものの、久々の復帰でまだ22分間しかプレーできていなかった攻撃に特徴のある選手をウイングバックに使うのは現実的ではなかった。
三笘をもう一つ前で使った場合、左ウイングバックには誰が入るのか。旗手怜央がいれば、川崎フロンターレ時代の変形版として考えることもできたかもしれないが、その旗手はこの試合をメインスタンドで見ていた。伊藤洋輝を仮に3バックではなくウイングバックに当てれば、守備面でより生きる選手だけに全体を下げる可能性もある。
右には毎熊晟矢か菅原由勢が入っていただろうか。ただし、流れを取り戻すという点で本来は攻撃的な選手を置きたいと考えれば、やはり伊東が欲しくなる。