■15分間をいかに使うか
もちろん、こうしたことがスタジアムの十数分間だけでできるわけがない。監督、ヘッドコーチ、分析担当コーチ、そして映像制作スタッフは、その試合への準備を始めたときから、起こりそうな問題点などを予想し、対応策を模索し、自分たちの戦術的プランをどのように実現できるかのディスカッションをし続け、選手たちにもことあるごとに示し続ける。そうした「ベース」の上に、試合当日の「前半分析クリップ」が生まれるというのである。
トイレや売店に並ぶのも「戦い」。コマーシャルになったら席を立っても前半のハイライトを見逃さないのも「プロのテレビ観戦者」としての「戦い」。選手はできる限りのことをして元気を取り戻す「戦い」。そして監督やコーチングスタッフは、実質的に使える「5~6分間」に向けて、短時間に神のような速さで最善の準備をする「戦い」…。ハーフタイムは、まさに「15分間の戦場」なのである。
では記者席のジャーナリストは何をしているかって? 早い時間に印刷にかける「早版」用の記事を書かなければならない新聞記者は、ハーフタイムには早くもテーマを考え始め、試合中より忙しく頭を回転させることになる。しかし、そんな切羽詰まった仕事をもたないフリーランスの老記者は、バッグの中からおもむろに魔法瓶とお気に入りのチョコレートを取り出し、「戦い」だらけの周囲をよそに、熱い紅茶とラムレーズン入りのチョコレートをゆっくりと楽しんでいるのである。