大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第129回「15分間の戦場」(3)リバプールが示したハーフタイムの効果的活用法の画像
ハーフタイムの活用法を熟知したユルゲン・クロップ監督 撮影:渡辺航滋( Sony α1使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は試合の合間、「15分間の戦場」について。

■ハーフタイムの使い方

 さて、ハーフタイムに、スタジアムでは何が起こっているのだろうか。観客のエリアでは、第1にトイレ前の長い行列である。スタジアムには一度に何百人もの人が使える数のトイレが設置されているが、寒い時期には間違いなく長蛇の列となる。人の行列はまた、飲み物や食べ物を売る売店の前にもできる。

 トイレにも売店にも行かない観客は、もしかしたら、ホームチームが趣を凝らした「ハーフタイムショー」を楽しむことができるかもしれない。川崎フロンターレは等々力競技場のトラックに自動車レースの「F1カー」を走らせたことがあるし、FC東京は毎年夏に「花火」で観客を楽しませる。

 だが私がこれまでで最も楽しんだハーフタイムは、1996年の欧州選手権(イングランド)で体験したものだった。この大会のハーフタイムでは、ただ場内に音楽が流されただけだった。だが、負けてばかりのイングランド代表への愛情をテーマにした『Three Lions』、英国のコメディ・グループ「モンティ・パイソン」のヒット曲『Always Lok on the Bright Side of Life』といった「ゆるめ」の曲や、「クイーン」の『We Will Rock You』がかかると、5万人以上の観客がいっせいに大きな声で歌うのだ。何万人もの人びとが踊りながら声を合わせて楽しそうに歌う姿は、ときに試合以上に感動的だった。

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