■監督が使える時間
テレビ観戦のファンにとってのハーフタイムは、延々と続くコマーシャルの時間となり、トイレに行ったり、冷蔵庫を開けて新しいビールを取り出したりする時間かもしれない。一方のテレビ局は、コマーシャルが流れてもテレビから目を離してはいけないよと警告するように、前半戦のハイライトシーンや解説者のコメントをコマーシャルの合間に細切れにして流す。
だが、同じ時刻、観客スタンドの下では、「もうひとつの戦い」が繰り広げられているのである。ハーフタイムは選手たちにとって、体を休め、エネルギーを取り戻すための時間ではあるが、チームとしてこの時間をどう生かすかが、後半のパフォーマンス、ひいては勝敗の行方に大きく関わってくるのだ。
選手たちは、ロッカールームに戻ってくると、まず水分を補給し、ユニホームを脱いで体温を下げることに努める。水分だけでなく、エネルギー補給用のゼリー飲料を飲む選手も多いかもしれない。そして新しいユニホームに着替える。体だけでなく、45分間の戦いで高ぶった気持ちも鎮め、心身ともに後半に備えるのがハーフタイムの重要な要素であるのは間違いない。
そして落ち着いたところで監督が話を始める。監督が使うことができる時間は、せいぜい、5~6分間である。前半がどんな内容だろうと、気づいたことをすべて話すことはできないし、話しても選手がすべてを覚えていられるか、読者の想像のとおりである。
そこで監督たちは、2つか、せいぜい3つのポイントに絞って話をする。ここで何を話し、何をどう強調するか、試合日の監督にとって最も重要な「戦いの場」であると言っていい。
前半に問題があったら、その解決方法を考え、具体的な解決策を示さなければならない。それは選手の交代であったり、ポジションの入れ替えであったり、選手同士の距離感といった微妙なテーマであるかもしれない。試合前のプランを変更し、システムの変更を余儀なくされることもあるだろう。そして後半をどうプレーするか、選手たちが具体的にその「絵」を描き、共有できるようにしなければならない。