後藤健生の「蹴球放浪記」第195回「日本人は本当に生魚を喰らうのかい?」の巻(2)ポルトガルと韓国で堪能した「日本人が苦手な料理」の画像
ポルト名物のトリパを堪能したEUROポルトガル大会のADカード 提供/後藤健生

 サッカーは、言語が通じなくとも世界をつなぐ文化である。多少の違いはあれど、触れることで互いの文化を学んでいくのだ。蹴球放浪家・後藤健生は、食文化にも同じ作用があると考える。

■欧州の魚の食べ方

 韓国でも刺身は人気料理です(韓国語でも「サシミ」です)。日本の刺身よりもずっと安く、量もたっぷりの刺身が出てくるのですが。ただし、やはり日本の調理人に比べて包丁の技術が劣っているのか、美味しさでは日本の刺身にはとうてい敵いません。

 だが、「Raw Fish」という表現では、その繊細な味がイメージできないのでいかにも生臭い印象になってしまうのです。

 もっとも、ヨーロッパでも生に近い酢漬けの魚は人気です。

 オランダ人は酢漬けのニシンをそのままつまんで、丸ごと食べてしまいますし、ドイツの駅ではパンに酢漬けのニシンなどを挟んだファーストフードを売っています。生魚そのままの形なので日本の寿司に比べてはるかに「Raw Fish」に近いイメージの食べ物です。

 そうそう、「イタリア料理にカルパッチョがあるじゃないか」と思った方もいるかもしれません。しかし、カルパッチョというのは本来は生の牛肉を食べる料理なのです。魚のカルパッチョは落合務シェフが発明した日本式イタリアンなのです(今では、魚のカルパッチョはイタリアにも逆輸入されているようですが)。

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