■無粋なライン

 私はかつて、「9.15メートルで光が止まるレーザー」を夢想したことがある。ボールの位置に立ったレフェリーがペンほどの大きさのこの装置を取り出してスイッチを入れると、「ポン!」という音ともに日中でも見える無害な太めの赤い光線が、9.15メートルだけ出るのである。もちろん、映画『スター・ウォーズ』の「ライトセーバー」にヒントを得たものである。

 だがバニシング・スプレーであろうと、ライトセーバーであろうと、レフェリーがこんなものを用いなければ守られない「ルール」とは、いったい何なのだろう。ルールを守ってこそ成立するのがスポーツであるはずなのに、誰もが知っているのに誰も守らないルールがあるというのは、サッカーにとって大いなる恥辱ではないだろうか。

 サッカー選手とは、「10ヤード」という体に身についているはずの距離さえ覚えられないほどの「痴呆」で、ゴールに近い位置でFKがあるたびにレフェリーが腰のホルダーから小さなスプレーを取り出してピッチ上に無粋なラインを引かなければその距離をとることができない―。こんな競技はサッカーだけに違いない。

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