■解釈の違い?
1872年のルール改正で、ハンドの反則に対してFKが与えられることになる。これが今日的な「FK」の誕生である。ただし直接相手ゴールに蹴り込むことはできなかった。翌1883年には、FKのときには相手方選手は6ヤード以上離れなければならないことになる。そして次第に、FKが与えられる反則は、ハンドに限らずさまざまなファウルへと広げられていき、相手方が離れなければならない距離も、30年後の1913年に「10ヤード」に延ばされたのである。
こうして誕生した「10ヤードルール」ではあるが、尊重されないことと言ったら、サッカーの他のルールの例を見ないのではないか。
反則があってレフェリーが笛を吹く。どちらのFKであるかは明らかだ。だがその瞬間に「守備側」となるチームの選手たちは一瞬の「痴呆」状態となり、何人もが「10ヤードルール」など忘れてボールに向かって殺到する。そしてひとりの選手がボールのすぐそばに立ち、ボールに背(あるいは尻)を向ける。守備陣形が整うまでの時間をかせごうというのである。
現行のルールでは、FKのときには、インプレーになるまで、守備側の選手は「少なくとも9.15メートルボールから離れなければならない」と書かれている。現在の選手たちは、このルールを「インプレーになるとき(相手が蹴るとき)に9.15メートル離れていればよい」と解釈しているに違いない。