大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第128回「誰もが知っているのに誰も守らないルール」(2)レフェリーたちの違反行為の看過、あるいは諦念の画像
サッカー界で、なかなか守られないことがある(写真はイメージです) 撮影:中地拓也

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、「サッカー選手は、分かっているの?」

■フリーキックの概念の変化

 サッカーの誕生は1863年。「10ヤード」という距離は、その最初のルールに出てくる。ただそれは、キックオフのときに相手方のチームが離れなければならない距離だった。この最初のルールには「フリーキック」という言葉も出てくるが、今日のように相手方の反則によって与えられるものではなかった。

 当時の「フリーキック」とは、ひとつはボールがゴール外のゴールラインを割ったときに与えられるものであり、もうひとつは「フェアキャッチ」した選手に与えられるものだった。前者の場合、ボールが出た後に最初にボールに触れたのが守備側であればゴールライン上に、そして攻撃側の選手であればゴールから15ヤードの地点にボールを置き、最初にボールに触れたチームがFKを行うことができた。

「フェアキャッチ」には少し説明がいる。当時はゴールキーパーがおらず、その代わり、相手が自陣ゴールに向かって蹴ったボールは、ノーバウンド、あるいはワンバウンドなら誰でも手でキャッチすることができた。その際に片足のかかとをグラウンドにつけ、「マーク」しなければならない。すると、その選手は少し自陣ゴールのほうに戻ってパントキックなどで前方に蹴ることができるようになる。相手チームの選手は、「マーク」された地点より前に出ることができないので、「邪魔されずに蹴れる=フリーキック」となったのである。

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