サッカーではポジションごとにそれぞれの役割があり、選手それぞれに個性がある。それでも、重要なのは年間20得点する選手であると、サッカージャーナリスト大住良之は語る。その意味することとは――。
■チームを優勝に導く選手たち
2023年のJ1リーグ得点王は、大迫勇也(ヴィッセル神戸)とアンデルソン・ロペス(横浜F・マリノス)の2人で、ともに22ゴールだった。大迫は神戸優勝の立役者になり、MVPの表彰も受けた。そしてアンデルソン・ロペスは、選手流出やケガ人続出で苦しんだ横浜FMを、優勝争いと、最終的に2位に導いた。
1993年にJリーグがスタートして31シーズン、そのうち6シーズンは2人の選手がランキングトップに並んだため、歴代の得点王は延べ37人となる。このうち大久保嘉人(川崎フロンターレ)が3回、中山雅史と前田遼一(ともにジュビロ磐田)、さらにジョシュア・ケネディ(名古屋グランパス)が2回ずつ得点王となっているから、個人で見ると32人ということになる。
ともかく、「延べ37人の得点王」がチームをシーズン優勝に導いたことが11回もあるという事実が、「得点王の価値」を雄弁に物語っている。2位は(2ステージ制でシーズン総合順位を決めなかった1997年までを除き)6回。31シーズンの半数以上で、「得点王」の存在が優勝争いの大きな要素になったことがわかるのである。
逆に「得点王」を生んだチームが年間10位以下に終わった例は6回に過ぎない。2022シーズンには清水のチアゴ・サンタナが14ゴールで得点王となったが、チームは18チーム中17位。「得点王」をもちながらJ2降格という非常に珍しい例となった。
ちなみに、この「14ゴール」という得点数は、Jリーグ31シーズンの得点王37人のなかでは最も低い数字である。その次に低いのが横浜FMの仲川輝人とマルコス・ジュニオールがそろって得点王となった2019年で、15ゴール。37人の得点王のなかで、20ゴールに届かなかったのは、この3人のほか6人、計9人である。