■楽しみな両チームの今後

 川崎の鬼木達監督は「タイトルを取り続けること」の重要性を熱く語った。

 いわゆる「勝者のメンタリティ」を手に入れるにはタイトルを取る経験を知るしかないからだ。苦しい戦いの中で、押し込まれてもけっして慌てることなく我慢しきって、PK戦も含めて諦めることなく戦って、結局、最後は勝利をつかみ取ってみせた川崎。彼らにそれができたのは、これまでいくつものタイトルを取ったという貴重な経験があったから。だからこそ、鬼木監督は「タイトル」にこだわったのだ。

 カウンター・プレッシングのスタイルがJリーグでも主流となりつつある現在。各チームの「川崎対策」も進化を続けており、もう、川崎としてもかつてのようにパス・サッカーだけで相手を翻弄して圧勝できる時代ではないのかもしれない。

 だが、2022年、2023年と苦しいシーズンを経験した中で「勝負強さ」を身に着けた川崎が、来シーズン以降、どんなチームに変身していくのか注目したい。

 そして、今シーズンは残留争いを経験したものの、最後に川崎相手にあれだけの試合を展開した柏。試合内容では上回りながら、最後にタイトルを攫われた悔しさも含めて、天皇杯決勝は来シーズン以降につながる試合となったはずだ。

 そして、今シーズンの成長を天皇杯決勝という大舞台で存分に疲労した細谷。決めきれなかったことの悔しさをバネに、ゴール前でボールを収めてタメを作れるFWとしてさらに成長を続けて、ワールドカップ優勝を目指すという日本代表にとっての「最後のピース」となっていってほしいものである。

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