■前半2点リードの東京Vが逃げ切る
0対0のまま試合を運んでいった東京Vは、20分あたりからボールを保持する時間を増やしていく。ペナルティエリア内にも侵入できるようになり、34分に均衡を破る。
MF森田晃樹が縦パスを差し込み、FW染野唯月とのワンツーでペナルティエリア内への侵入をはかる。ワンツーはうまく成立しなかったものの森田がボールを保持すると、密集のなかでMF中原輝がボールを引き取った。得意の左足を振り抜くと、ゴール右スミへ蹴り込んだ。中原のクオリティが、東京Vに先制点をもたらしたのだった。
この一撃はピッチ入りの色合いを変えた。東京Vの試合運びに、落ち着きが生まれたのである。
前半終了間際にもゴールが生まれる。巧みなキープ力で千葉の守備陣を悩ませるMF齋藤功佑が、左サイドから絶妙のクロスを入れる。ゴール前には染野とFW山田剛綺が詰めていたが、ふたりの間から森田が飛び込んできた。
4-4-2のシステムでダブルボランチを定位置とする森田は、ビルドアップから攻撃の仕上げまでに関わっていく。止める・蹴るの技術は読売クラブの遺伝子を受け継ぐものだが、得点能力を披露する場面は少ない。シュートセンスがないわけでないのだが、今シーズンのリーグ戦では1得点に終わっている。
さらに言えば、167センチの森田はヘディングが得意な選手ではない。その彼がゴールエリア内まで入り込み、ヘディングシュートを突き刺したのである。チームの勢いを象徴する追加点であり、千葉に大きなダメージを与える追加点ともなった。
引分けでもファイナルへ進出できる東京Vは、2対2までならOKだ。27節のベガルタ仙台戦と32節のファジアーノ岡山戦で3失点を喫しているが、リーグ最少の31失点を誇る守備陣がそこまで崩れるのは例外的だ。千葉の力ずくの攻撃を1点にしのぎ、東京Vはファイナルへの切符を手にした。
「我々には積み上げてきたものがある」と城福浩監督は話す。
清水と激突する12月2日の決勝でも、自分たちで主導権を握る東京Vのサッカーで勝利を目ざす。