■進化している使用方法
だがゲームもたけなわ、最高潮に盛り上がったとき、スポーツクラブのマネジャーらしき人が血相を変えて飛んできた。
「これは困ります!」
「え?」
「広告がはいっているじゃないですか!」
見ると、私がもってきた赤い「ゼッケン」には、白い太い文字で番号が書かれていたのだが、その下に小さく「TOYOTA CUP」とロゴがはいっていたのである。これは大会名であって、けっして広告なんかじゃないのだが…。
日本でサッカーのトレーニング用に専用のビブスがつくられるようになるのは、それから数年たってからになるのではないか。FIFAがカメラマンに着せるビブスを「bib」と表現するようになり、自然に「ビブス」という言葉が日本にもはいってきた。
そしていま、ビブスは、サッカーのトレーニングに不可欠なものとなり、緑一色の練習グラウンドを、色とりどりの花のように華やかに演出しているのである。それだけではない。ビブスは、災害時に混乱した現場で支援に当たる人などを識別するのに使われるなど、さまざまな方面で使用が広まっている。
しかしいずれにしても、「よだれかけ」はあんまりのような気がする。「識別ベスト」「トレーニングベスト」など、もう少し成熟した言い方はないものかなどと、ときおり思ってしまうのである。