Jリーグは佳境に入っている。シーズン終了後には毎年、さまざまなチームや選手が表彰される。その中にはない賞ではあるが、ベテランのサッカージャーナリスト大住良之は「クラブ・オブ・ザ・イヤー」としてヴァンフォーレ甲府を称えたいという。甲府のピッチ内外の奮闘を挙げながら、その理由をつづる。
■落ちないチーム力
他のチームがほぼ週1試合のペースでコンスタントに8試合を戦ってきた9月中旬からこのJ2最終日にかけて、甲府だけは、過密日程で12試合を戦っただけでなく、メルボルン、杭州と、慣れない海外遠征もこなしてきた。「完全ターンオーバー」に近いメンバーで「Jリーグチーム」と「ACLチーム」を分けていたとはいえ、数は少なくても連戦の選手もいたし、先発と交代出場という形で連戦にかかわった選手も何人もいた。疲労が蓄積していなかったとは言えないだろう。
それでも、J2リーグ戦とACLでの甲府の戦いぶりは驚嘆に値する。Jリーグの多くのクラブは、天皇杯の序盤戦、下部のチームとの対戦では、半数以上の選手を「ターンオーバー」して戦う。だが、そうした試合で良い面が出たことをあまり見た覚えがない。たいていの場合、非常にまずい試合をして、かろうじて勝つか、悪ければ負けてしまう。コンビネーションができていないのだから当然だろう。
ところが今季の甲府は、完全にチームを入れ替えながらプレーや試合の質がほとんど変わらないのである。互いを信じてシンプルにボールを動かし、その間に全員が献身的に動く。パスはリズミカルにつながり、繰り返しクリアなチャンスが生まれる…。その質が、「ACLチーム」でもまったく落ちないのは、大きな驚きだった。資金力と厚い選手層をもつチームならわかる。しかし甲府はけっしてそうしたチームではない。その事実に、私は驚嘆するのだ。