■”10番か8番か”二者択一である必要はない

 小泉はもともと裏に飛び出したり、個人で仕掛けて打開するスペシャリティとではない。大久保のような爆発的なスピードもないし、伊藤敦樹のような迫力もない。その代わり、機を見てタイミングよく前に出るセンスはFC琉球の時代から持っていたし、だからこそ浦和に加入する前のシーズンはJ2で6得点を記録したのだ。”10番か8番か”二者択一である必要はない。スコルジャ監督も小泉に180度の変化を求めていたわけではないのだろう。少し時間はかかったが、ようやく”マチェイ・レッズ”における役割を見出したように見える。

 その小泉が今シーズンの初ゴールを記録したのは10月20日の柏レイソル戦だった。センターバックのアレクサンダー・ショルツが前に持ち上がり、右の酒井宏樹、大久保とつないで、安居海渡にボールが渡る。シュートはGKに阻まれるが、こぼれ球を小泉がワンタッチでゴールに流し込んだ。
「個人としても、チームの設計としても、僕があそこに入っていけるようになっていることが、すごく良いのかなと思います」

 さらに荻原拓也のゴールをアシストして、2−0の勝利に大きく貢献した小泉にとって、視界が大きく開ける試合となったはずだ。そして迎えるルヴァン杯の決勝。あのACLファイナル以来、タイトルのかかる大一番で、小泉がどういった働きを見せるのか。普通なら”塩試合”と言えるような内容であっても、実際は両者が高い集中力で、隙を与えず隙を突こうとする研ぎ澄まされた空間になるはず。だからこそ組み立てとフィニッシュを繋いでいく小泉が、機を見て勝負をかけるシーンは絶対に見逃さないようにしたい。

(取材・文/河治良幸)

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