日本代表で遠藤航(リバプール)、守田英正(スポルティング・リスボン)と並ぶボランチの主軸になっていくためにも、田中碧は所属のフォルトゥナ・デュッセルドルフで確固たる実績を残さなければならないはずだ。
彼がドイツ2部に赴いたのは、東京五輪直前の2021年夏。
「日本だと『うまい』というのがピラミッドの一番上に来て、その下に『速い』『強い』という武器が来るようなスタンスですけど、欧州では『うまい』は大して求められていないというか、それよりも『強い』『速い』『1対1で負けない』といった価値観の方が重要視されているとは感じました」と、彼は現地でトレーニングに参加した直後、こんな感想を漏らしていた。
それは川崎フロンターレのアカデミーで育ってきた選手にとっては異次元の世界。これまでとは違ったサッカー観の中、プレーすることで、選手としての幅が広がる…。そんな期待感を抱きつつ、田中碧は新たな環境に身を投じたのである。
東京五輪でフル稼働し、第1次森保ジャパンの重要な節目だった同年10月のオーストラリア戦(埼玉)で値千金の先制弾を叩き出したこの男をチームも高く評価。1年目は主軸と位置づけられ、29試合出場1ゴールという結果を残した。しかしながら、チームは10位と全く1部昇格に絡めず、田中碧はドイツ2部で2年目を迎えることになった。