■世界の警察への挑戦
そうなると、次なる疑問が湧いてきます。
ラテンの国以外ではどうなうのだろうか?
それを試す機会は、再び4年後にやって来ました。アメリカ・ワールドカップです。
僕が、11歳になった子どもを連れて行ったのは、パサデナのローズボウルで行われた決勝戦でした。
ブラジル対イタリアの黄金カードです。ただ、ブラジルが順当に勝ち上がってきたのに対して、イタリアはグループEの初戦でアイルランドに敗れ、しかも、守備の重鎮フランコ・バレージが膝を負傷してしまいます。しかし、なんとかグループ3位で勝ち上がったイタリアはしぶとく戦って決勝に進出。この間、バレージも内視鏡手術を行った後、必死のリハビリを終え、なんと決勝戦に間に合ったのです。
さて、子どもはどうなったかって?
案の定、ラテンの国のように簡単には行きませんでした。入口でセキュリティーに「子どもはダメだ」と至極まっとうなことを言われたのです。
しかし、そこで引きさがっては元も子もありません。
「でも、子どもは連れてきてしまったんだ。じゃ、試合が終わるまでお前が責任を持って子どもを預かっていてくれるか?」と僕が難題を吹っ掛けます。
すると、そのセキュリティーも「しゃあないなぁ。じゃあ、入っていいよ」と見て見ぬふりをしてくれたのです。
こうして、子ども連れで記者席に入りましたが、さすがに決勝戦ですから記者席も満員です。それで、僕の席の後ろの段差のようになっているところに子どもを座らせたのです。