後藤健生の「蹴球放浪記」第179回「ラテン系の国では子どもはノーチェック(だった)」の巻(2)バッジョとロマーリオを記者席から見つめた11歳の画像
アメリカW杯決勝の記者席用入場券 提供/後藤健生

 日本のサッカースタジアムは、世界でも最高級に治安が良いと言っていい。海外では暴れん坊も多く、厳しい監視の目が注がれている。だが、時には思わぬ人物が、その警備網を突破することがある。これは、サッカージャーナリスト・後藤健生の実験レポートである。

■ラテン系は余裕?

 メディア・センターの中を子どもの手を引いて歩いていると、日本人記者からは奇異の目を向けられました。当時の僕は、韓国や東南アジアなどの記者で面識のある人が多かったのですが、アジア人の記者もみんなビックリしていました。

 しかし、現地のイタリア人記者たちは子どもがいても当然のような顔をしています。

 イタリア大会の頃は、一般のスタンドも、記者席も満員になることは少なく、カードによってはガラガラという試合も多くありました。

 格安航空券が一般化して、大金持ちや熱心なファンやフーリガン以外の一般人も気軽にワールドカップ観戦にやって来るようになり、ほとんどすべての試合が満員になるのは、1998年のフランス大会以降のことです。

 ですから、この時は子どもは記者席の空いている席に座らせて、ゆっくりと観戦することができました。

 ちなみに、試合はイングランドがデビッド・プラットのゴールで先制しましたが、カメルーンが逆転。カメルーンは終盤までリードを保っていましたが、83分にガリー・リネカーのPKで同点とされ、延長でも再びリネカーにPKを決められ、カメルーンはベスト8で姿を消しました。当時のアフリカ勢はPKやFKで自滅することが多かったのです。

 いずれにしても、こうして「子どもに甘いラテン系の国では子どもはノーチェックで入れる」ということが立証されたわけです。

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