■明らかにされるべき放映権料

 さて、冒頭に紹介したように、女子ワールドカップでのなでしこジャパンの戦いぶりは、BS放送と地上波放送を通じて全国の誰でも視聴できることに決まった。

 だが、今回の放映権問題を通じて、ワールドカップの放映権を巡るFIFAと各国のテレビ局やネット配信事業者との関係についての問題が明らかになった。いずれは男子ワールドカップでも同じような事態が生じて、ワールドカップをテレビ(またはネット)で視聴できなくなってしまう可能性があるのだ。

 最終的にNHKでの放映が実現されることになったが、NHKはFIFAに対して、どのような交渉をして、どのような譲歩をしたのか、あるいはどのような譲歩を引き出したのか。そして、どれだけの金額を支払ったのか。

 そうした事実は、今後しっかりと伝えてほしいものだ。

 FIFAは女子サッカーを通じて、ジェンダー平等を実現し、女子アスリートの社会的地位を上げようとしている。目標としては当然のことである。だが、まだまだ男子に比べれば女子ワールドカップへの関心度は低く、国によってそのバラつきも大きいという女子サッカーの現状を考えれば、高い放映権を設定して賞金を増やすことよりも、まずは多くの人々が女子ワールドカップの映像にアクセスできるようにして、女子サッカーの露出を増やすべき時期にある。

 そうした問題点について考えるためにも、最終的にFIFAとNHKの間でどのような交渉が行われ、最終的にNHKがどれだけの金額を支払ったかを明らかにしてほしいものだ。NHKが支払う放映権料の“原資”は、われわれ国民が強制的に徴収される「視聴料」なのだから……。

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