■エスニック・ブームよりも早く
江戸時代の日本人は仏教の戒律に従って(少なくとも表立っては)肉はあまり食べませんでしたが、明治維新を迎えると日本には西洋料理が入ってきました。
最初の頃は「牛鍋」や「すき焼き」、「肉じゃが」のように味噌や醤油で日本風の味付けにした料理が広まりましたが、その後、大正の終わりから昭和の初めにかけて、トンカツ、コロッケ、シチュー、グラタン、スパゲッティといった「洋食」が一般化してきました。
カレーは、もちろん元々はインドの食べ物ですが、日本に最初に入ってきたのは英国などで西洋化したカレーで、その後、その西欧式カレーを改良して、「洋食」の一種として日本式の「カレーライス(またはライスカレー)」が一般化しました。「カレーうどん」なんていうものまで発明されて、カレー料理は日本にすっかり定着しました。
また、やはり大正期には中華料理も普及しました。もちろん、辛くもなくあまり脂っぽくもない、日本人の舌に合わせた中華料理としてです。
でも、僕がまだ若かった頃にはタイ料理やベトナム料理といった東南アジアの食べ物はまだあまり一般的ではありませんでした。「焼肉」は別として、韓国料理も珍しいものでした。まして、インド亜大陸や中東地域の食べ物はほとんど知られていませんでした。
日本で「第1次エスニック・ブーム」が起こったのは1980年代半ば以降と言われています。