去る者は追わない方針の理由

――入部に際して、セレクションはありますか?

 ありません。我々はプロサッカー選手を目指すクラブではなく、あくまでボランティアで運営している町のクラブなので、初心者の子でも一から学べます。ただし、大会などで勝ち上がった時は「均一に出場機会を与えることはできません」と、入部に際して親御さんへしっかりお伝えしています。

 現在の部員は全員が公式戦に出場できていますが、時には勝負に徹する場面も必ず出てきます。そうした際、どうしても出場機会に差が生まれてしまう。その点において、「スポーツの世界は厳しい」ということも親子で学んでほしいと思っています。

――中には、そういった出場機会の違いで、クラブを辞めてしまう子もいるかと思います。

 基本的に、去る者は追わない方針です。もちろん、別のクラブへ行きたいという子もいますが、快く送り出しています。時には、一時的に休部扱いにして「お目当てのクラブに体験入部をしてみて、そこが自分と合っているか確かめてみない?」という提案をすることもあります。そうして、実際に移った子もいれば、「やっぱり、さぎぬまに戻りたい」と戻ってきてくれた子もいますね。

――クラブを運営する側としては、上手い選手には移籍してほしくないという思いもあるのではないでしょうか。

 中には、そういうクラブもあるかと思いますが、我々のスタンスとしては、どのクラブであろうと、その子自身がサッカーを楽しめて、才能を開花させてくれればオッケーなんです。選手のためになるなら、川崎フロンターレだろうと、マリノスやヴェルディだろうと、どこへでも行って挑戦してほしい。そういう子には「競争が厳しいからって、根負けするなよ」とエールを送っていますね(笑)。

 第2回、「三笘薫も支持する褒めて伸ばす指導法」に続く。

さわだ・ひでじ
1958年5月17日、大阪府生まれ。長男のさぎぬまSC加入により、サッカーに携わるようになる。以降、チームの監督を務めるなどし、2004年には代表に就任。のちに日本代表となる、三笘薫、田中碧、板倉滉、権田修一らを輩出した。現在は、川崎市サッカー協会4種役員や宮前区少年少女サッカー連盟委員長も務める。

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