■二度と来ないはずだったのに
試合終了後、僕はシンガポール行きのバスに乗るためにバスターミナルに向かいました。静かな夜でした。そして、周囲をよく見ると、スタジアム周辺には安そうなホテルがたくさんあるようです(バスターミナルのそばですから、当然ですよね)。
それで、「ああ、次にジョホールバルに来る時にはこの辺に泊まればいいんだ」と思いました。ただ、「このスタジアムに来ることなんて、たぶん二度とないだろうなぁ」とも思ったのです。
6月29日の夜中のことでした。
それから、わずか4か月半後。僕は再びこのスタジアムを訪れることになりました。そう、11月16日のフランス・ワールドカップ・アジア第3代表決定戦のためです。
イラン戦の時は、僕はスタジアム近くの安ホテルではなく、ジョホールバル市内中心部の「プテリ・パンパシフィック」という大きなホテルに泊まりました。たぶん、仕事上の都合でそうしたのでしょう。
そしたら、なんとイラン代表も同じホテルに泊まっていたのです。
日本がゴールデンゴールで勝利した翌日の朝、部屋から下を見下ろすと、ホテルのそばの空き地でイラン代表がトレーニングしているのが見えました。彼らは、オーストラリアとの大陸間プレーオフに備えなければならないのです。
この光景を見た時、僕は初めて「ああ、本当に勝ったんだ……」と実感したのでした。