■GKの有効活用へ

 21世紀にはいると、「ペナルティーエリアを出てDFラインの背後をカバーする」という「スイーパー」的な役割だけでなく、積極的にGKを活用してチーム全体の攻撃力を上げようというアイデアが誕生する。そのきっかけは1992年の「バックパスルール」だったかもしれない。

 1990年のワールドカップで1試合平均2.21ゴールという史上最少記録となり、もっと攻撃的で得点の多い試合にしなければサッカーの人気は廃れると憂慮した国際サッカー連盟(FIFA、具体的にはその事務総長のゼップ・ブラッターである)は、「味方から足でパスされたボールについては、自陣ペナルティーエリア内のGKでも手でプレーすることはできない」とルールを改正した。

 それまでのサッカーでは、非常に安易にGKに戻し、それをGKは安全に手で受けて時間をつくったり、余裕をもって攻撃に展開することができた。しかし新ルールにより手を使えないGKへのバックパスは「リスク」を伴うことになった。FIFAの思惑どおりバックパスは減った。バックパスせざるをえない場合には、受けたGKはワンタッチで前線に大きくけるのが普通になり、試合のスピードは上がった。

 こうした時期に、逆に「GKのパス」を有効に使うことでDFラインで「数的優位をつくれるのではないか」という大胆な発想が生まれた。DFラインでビルドアップを始めるとき、GKがペナルティーエリア内で、あるいはときにそこを出て加われば、間違いなくフリーの選手をつくることができる。自分たちの前線の選手のひとりを相手GKがマークするという状況はありえないから、GKがビルドアップに加われば「11対10」の状況になるのである。

(3)へ続く
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